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zoom RSS 相続人を激怒させる家業従事型特別寄与

<<   作成日時 : 2014/04/04 11:33   >>

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特別寄与は、使途不明金問題、遺産の範囲問題、特別受益問題と並んで、家裁を悩ます四大問題である。使途不明金、特別受益が「あいつだけ甘い汁を吸っていた」として、相続人が他の相続人を追求するという訴訟法的構造を持つのに対し、特別寄与は裁判所に対し「自分の貢献を認めてもらいたい」という非訴訟的構造を持つ。そのため、特別受益と異なり、特別寄与は、遺産分割調停・審判とは別に申立をする必要があるし、家庭裁判所の調査官調査を経て裁判所が判断する仕組みになっている。

現在、家庭裁判所は、特別寄与をいくつかの類型に分け、それぞれの類型について認定要件に該当する事実の主張と立証を当事者に要求している。そこで自身の特別寄与を主張するためには、まず、自分の主張する特別寄与がどの類型に該当するかを示し、かつ、自身の主張する特別寄与が、裁判所の要求する特別寄与の要件に該当することを、具体的な証拠を提示して証明しなければならない。

実務で一番多いパターンが、代理人弁護士が、相続人の陳述書を提出し、「私は、これだけ貢献した、これだけ苦労した」と、だらだらと経緯を述べるパターンである。どの類型の特別寄与に該当するか、要件に該当する事実は何か、それを裏付ける証拠は何か、それが、ほとんど主張されていない。

今回は、それについて、家業従事型特別寄与を例にして説明する。

家業従事型特別寄与で、裁判所が頭を悩ますのは、「家業に従事して貸借対照表上の相続財産を増額させたら、なんでもかんでも、その増額分が特別寄与の対象になり、その割合は貢献度に応じて決まる」と、多くの弁護士が誤解していることである。
例えば、父の経営する不動産業で働くようになった相続人の一人が、父が所有して放置していた土地について、自分が、業者と交渉して、コインパーキングを営むようにした。その料金が毎月30万円、相続時までの総額は3000万円だとする。遺産分割調停では「その3000万円のうち、半分が自分の寄与だから、1500万円が特別寄与だ」、という主張がなされる。

しかし、裁判所は、特別の事情がない限り、こういう思考は取らない。自分の果敢な貢献で相続財産が増えたと言うが、財産の増減などは、色々な要素が複合的に影響するから、相続人の貢献と財産の増加・維持との因果関係は、ほとんどの場合、不明である。それに、もし、この論法を認めれば、例えば、不動産運用に失敗して財産を減らしたら、家業従事者の相続分を減らしてもよいことになるが、それは非常識だろう。

また、特別寄与が争われる例では、必ず、他の相続人からの反発がある。先の例で言えば、「コインパーキングよりも、こうした方が財産が増えた。俺はそう進言したんだが、あいつは無視した。財産を減らした」とか、「転職を繰り返してようやく父のところで働かせてもらったのに、何が特別寄与だ。父に寄生して財産を減らした野郎だ!」という反論が出る。
家庭内部の、こういうごちゃごちゃした問題を、裁判所が正確に判断するのは不可能だ。

裁判所は、こういう場合、給与をもらっていたか、対価を得ていたかという点に着目する。これは、客観的に判断できるからだ。
つまり、本来は、これだけ働けば、これだけ給料をもらえるのに、実際は、ほとんどもらっていない。本来は、払うべき給与を払わずに済んだ、その分相続財産が増加した。その増加分が特別寄与だと考える。

例えば専業主婦の長女が、被相続人である父の会社で、毎日、ほとんど無給で経理を担当していた。他の従業員さんは、毎月、20万円もらっていたのに、長女に給与を支払わずにすんだから、その給料分だけ相続財産が減少しなかった。この減少分だけ特別寄与があると考えるのである。

したがって、何よりも、無給であることが要求される。仮に、多少の対価をもらっていても、いわゆる小遣い程度の金額、つまり「著しく小額」の対価であることが必要だ(無償性)。なお、一見「無償又は著しく小額」のようでも、親の家に住んで家賃の支払いを免れていたり、生活費の面倒をみてもらっていれば、「無償また著しく小額」とは言えない場合が多い。

家業従事型の特別寄与は、ほとんどの場合、ここで「要件を欠く」として蹴られてしまうことになる。

また、「無償」の要件をクリアしても、無償だから、当然に、特別寄与だということにはならない。子供であることから、親の事業を手伝ったという側面があるから、子供の扶養的部分は除外する必要がある。
同様に、たまに、例えば、週に1,2回程度手伝っても、特別寄与として考慮されることはない。(専従性)。
また、1,2年程度手伝っても、それも、親孝行のレベルの問題だから、少なくとも3年以上は家業に従事する必要がある(継続性)。

こういう要件に該当し、それが特別な貢献といえるレベルであり、かつ、財産の維持又は増加との因果関係が明確ならば、特別な貢献があったとして、特別寄与が認定されることになる。

先の例で言えば、親とは同居していない専業主婦である娘が、3年以上にわたり、無給で、毎日、親の会社を手伝えば、それは、子の親に対する扶養のレベルを超えているから「特別な」寄与があることになる。
逆に、親の不動産業を手伝っていた子供が、ちゃんと従業員としての給与をもらっていれば、それが「著しく小額」でない限り、いくら親の資産を増加しても、特別な寄与はないことになる。

なお、給与との差額が、そのまま特別寄与認定額になるわけではない。子供が親の家業を手伝っても、子供としての扶養的な部分がある。その部分は控除される。同居しているとか、親から生活の面倒をみてもらっていたとか、そういう部分も、かなり重視され、結構減額される。

以上から分かるように、家業従事型特別寄与を主張するためには、1,特別な貢献、2,無償制、3,継続性、4,専従性、5,因果関係を、具体的な書証を添えて、具体的事実を主張・立証しなければならない。
また、その期間は、いつからいつまでか、同居していたのか、同居していたなら家賃は支払っていたのか、生活費は、誰が負担していたのか、これが非常に重要な事項となる。

もちろん、相続人全員が、「あの人はよくやった」と共通の認識を持てば、法律論と関係なく、大雑把に特別寄与を認定できる。ただ、ほとんどの例で、特別寄与主張する相続人は、他の相続人からは「親に寄生して生きてきた相続人」と見られている。話し合いは困難だ。

問題は、以上の「現実」を伝えると、被相続人の事業を継いでいる相続人が、ときおり、調停室で感情を爆発させることだ。裁判官に噛みつかんばかりの相続人もいる。
そのため調停委員会サイドも、家業従事型特別寄与の「現実」を伝えるときは、かなり神経質になり、ある意味、当事者の顔色をうかがいながら、現実を伝えることがある。
代理人弁護士が事前に依頼者である相続人に説明しておいてもらえばよいのだが、その代理人自身も理解していない人が多いのが現実で、依頼者と一緒になって調停委員会を攻撃・非難する。


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