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zoom RSS 今年1年を振り返って 弁護士に理解してもらいたい遺産分割の法的枠組み

<<   作成日時 : 2016/12/22 17:56   >>

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〔遺産分割の法的枠組み〕
現在、東京家裁をはじめとして、全国の家庭裁判所では、遺産分割の法的枠組みに基づいて分割調停が行われている。

遺産分割の法的枠組みとは、以下のとおりである。

まず相続人の範囲、遺言の有無や解釈問題、遺産分割協議の有無という前提問題を解決する。
この問題で解決できないときは、調停を取り下げてもらい、訴訟で解決し、事件が終了した段階で、再度、遺産分割調停を申し立ててもらう。
 ↓
前提問題が解決したら、
まず遺産の範囲の確定―何を分けるかを決める。世間で遺産と言われているもののなかには、実は遺産でないもの、遺産だが分割対象にならないものがある。これについて合意を得る必要がある。合意ができたら中間調書を作成し、ステップ終了を関係者全員で確認する。実は、ここが一つのヤマで、弁護士でこの法律的分類が正確にできる弁護士が非常に少なく、これまた、家裁を悩ませている。相続に関する弁護士のホームページで、ここを意識している弁護士は非常に少ない。
 ↓
次に分ける遺産の評価をする。この場合、合意ができないときは、鑑定するが、必ず結論の如何に関わらず、その鑑定結果を尊重するという合意をし、これまた中間調書に作成する。(時折、この合意を拒否する弁護士がいて家裁を悩ませている)
最終的に評価について全員の合意が得られたら、これまた中間調書で各遺産の評価を記載し、ステップ終了を関係者全員で確認する。
 ↓
評価がすんだら、特別受益は持ち戻して計算し特別寄与は差し引き、各人の具体的相続分を算出する。具体的相続分の主張は、当事者主義的に運用されている。調停委員会で何とかしてくれるだろうという甘えは許されない。
この作業を終えれば、各人の相続分が具体的数値となって現れる
 ↓
各人の取得分の数値が判明したら、そこで取得希望遺産を割り振る。自己の取得したい遺産が自己の相続分数値を上回るときは超過額を代償金として支払い、取得したい遺産がないとき、あるいは取得希望遺産が自己の相続分数値を下回るときはその金額を代償金としてもらうことになる

このように、遺産分割調停は範囲の確定→評価の確定→具体的相続分の算定→配分というステップで進められ、そのステップ終了毎に中間調書を作成し、次のステップに進むというステップ方式を採用している。
遺産の範囲の確定は、おおむね4回終了を目標としており使途不明金問題も、4回を過ぎたら訴訟で解決するよう指示している。
この方法により、かつては5〜10年と言われた遺産分割が、おおむね1〜2年で終了している。いまだに一般民事よりは多少時間がかかるが、「多少」という程度に収まっている。

〔前提問題を解決しなければ遺産分割協議はしない〕
遺言が有効か、これは遺産かという、いわゆる遺産分割の前提問題を調停で解決しようとせず訴訟で解決させるのは、二つの理由がある。

第1は、論理的な理由で、遺産分割の前提問題について仮に家裁の審判で判断しても、その判断には既判力がないから、その判断に不満な当事者は、地裁に改めて判断を仰ぐことができる。もしその判断が家裁と異なれば、審判自体が失効し、遺産分割は、最初から全部やり直しである。せっかく、時間をかけて遺産分割審判をもらっても、意味がない。

第2は、実務的な理由で、この方式は、代理人弁護士による駆け引きを許さないというメリットがある。代理人弁護士のなかには、特別寄与と特別受益以外は修正できないはずの相続分を、強引に修正させる手段として、この前提問題を持ち出す弁護士が時折いる。
本来、前提問題は協議しても解決できない問題であり、この問題を遺産分割調停で協議しようとすると、かつての遺産分割調停のように必然的に調停が長期化し混乱する。この長期化を避けようとすれば、前提問題を持ち出す当事者に妥協する外はないことになる。しかし、これでは、特別寄与と特別受益のみが相続分を修正できるという相続法の制度自体が歪んでしまうことになる。

自分の経験からすると、前提問題を真剣に争う当事者は速やかに調停を取り下げるが、駆け引きに使う当事者代理人弁護士は、なかなか調停を取り下げず、「一体的に解決したい」とか「親族だから訴訟は避けたい」という言い訳を言って、なかなか取下げに応じない傾向がある。

〔遺産分割が理解できていない弁護士が多い〕
遺産分割の法的枠組を正確に認識している弁護士は、実は、必ずしも多くない。「相続に強い」とうたっている弁護士のホームページを見ても、この家庭裁判所の遺産分割手続きの法的枠組みを理解しているとは全く思えないパターンが多い。家裁の最初の仕事は、実は、この遺産分割の法的枠組を弁護士に理解させることだが、なかには、頑なに理解を拒む弁護士もいて、苦労する(当時者は素直に受け入れてくれる場合が多い)。
家裁は、遺産分割の初歩的知識のない弁護士のために色々なレリーフを用意しているが、その手の弁護士は、自身が初歩的知識がないことの自覚がなく、調停委員会にくってかかり、家裁の用意したレリーフなど全く無視する。気の弱い調停委員だと、こういうダンプカーみたいな弁護士に引っ張られ、調停は無意味に長期化してしまう。

〔紛争の一体的解決〕
しばしば紛争の一体的解決という用語が代理人から主張される。確かに紛争の一体的解決が理想であることは異論がない。しかし、遺産分割は、他の民事紛争と異なり、遺産分割そのものとは別に、これに付随する問題(葬儀費用・遺産管理費用・遺産収益の配分・祭祀承継・相続債務の整理分担・使途不明金問題・遺言の解釈や執行の問題等)が多数生ずるという特色がある。これらの問題を一体的に解決しようとすると無理が生ずる。容易に合意が得られない問題は、これはこれで別に解決してもらうしかない。


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