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zoom RSS 重度の認知症高齢者が損害を発生させた場合、後見人や親族は賠償責任を負うか?「家単位」と「個人単位」説

<<   作成日時 : 2017/02/25 10:26   >>

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民法713条は、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。」と規定し、同714条では、「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。」と規定しています。

以前は、この条文が問題になることは、あまりありませんでした。問題になるとしたら、712条。これは、「子供の不始末は親の責任」という条文ですから、まあ、世間の常識と一致する。

ところが、最近、高齢化社会の進行に伴い、体は健康だけど認知症が進行し、家族が困惑するという事態が出現しています。
自分の親が認知症、特にアルツハイマー型認知症なんかになると、家族は、その親に振り回されて、その苦労は、並大抵のものではありません。施設に入れようとしても、どこも満杯だし、特にアルツハイマー型認知症だと凶暴性が出てくるので、施設の方でも受け入れたがらないという現実があります。

こうして、自分の親が認知症になり、その介護に困惑疲弊しているのに、その親が起こしたトラブルまで賠償責任を負うのか、という問題が出現してきたわけです。
これは、高齢者問題は、介護者が最終責任者か、社会全体が責任を負うべきなのか、という問題で、従来は、当然、家族が責任を負うと考えられていました。民法は、家制度的な発想があり、家族の不始末は家族の責任という発想に基づいているからです。

で、名古屋地裁H25・8・9が、この難しい問題に民法の趣旨に忠実に家単位的考えをとり、「親の不始末は子供の責任」「配偶者の不始末は、一方の配偶者の責任」という判決を出したもんだから、世間、特に介護関係者が猛反発。高齢者問題は社会全体で解決すべきで、その家族にだけ責任を負わせるのは何事か!というわけです。マスコミが騒ぐ事態になり、あわてて名古屋高裁が、過失相殺の規定を類推し、50%の減額をしたものの、これでも、やはり世間は猛反発。
しかも、この判決の見解からすると、後見人も、被後見人が起こしたトラブルに監督責任者として賠償義務を負担することになりそうです。
自分も、この判決を聞いたとき、非常識だけど、家単位的考えをとる民法の解釈としては、やむをえないと思いました。ただ、最高裁は、これほどの世間の反発を受けて、思い切った法解釈をするのではないかという「期待」もありました。

こういう事態をふまえて、最判三小判H28・3・1が示されました。この判決で注意すべきは、家族だけでなく、成年後見人の責任についても、触れていることです。

最高裁判例が、高裁・地裁判例と根本的に異なるのは、家族の不始末は家族の責任という「家単位的な考え」は、今の時代には通用しないと判断し、「個人単位的考え」をとり、配偶者や子供、成年後見人=「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」とは考えなかったことです。
最高裁は、以下のとおり判示しました。
1,成年後見人について
成年後見人の身上配慮義務は、成年後見人が契約等の法律行為を行うに際の成年被後見人の身上に配慮すべきことを求めているにすぎず、事実行為として成年被後見人の現実の介護や行動の監督までは求めていない。保護者や成年後見人=714条の監督義務者ではない。
また、介護施設の場合も、成年後見人同様、当然に714条の監督義務者にたるものではないと判示しています。
(これに対し、精神病院に入院している場合は、当然に、病院が監督者にあたると判断しています。病院は、注意が必要ですね)
2,配偶者について
配偶者には相手方に対し扶養の義務があるが、そのことから直ちに第三者との関係で監督義務があるとは言えない。配偶者=714条の監督義務者ではない。

つまり、高齢者問題は、社会全体の責任問題だと判断したわけです。
じゃあ、こういう人たちは、一切責任を負わないのかというと、そうではなく、
「責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けて その者が当該責任無能力の監督を現に行い その態様が単なる事実上の監督を超えているなど その監督義務を引き受けたと見るべき特段の事情 が認められる場合」
には、民法714条1項を類推適用すべきだ
と判断しています。

そうなると、「監督義務を引き受けたと見るべき特段の事情」 が認められる場合とは、どういう場合なんだという疑問が出てきますが、最高裁は、
以下の6基準に従って判断しなさいと言っています。
1,家族自身の生活状況や心身状況
2,精神障害者とその親族関係の有無・濃淡
3,同居の有無その他の日常的な接触の程度
4,精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情
5,神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容
6,これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情

最高裁は、妻については、妻は身体に障がいがあり、長男は、ずっと横浜・東京に居住していたから、監護が現実的に可能であったとはいえず、したがって、監督を引き受けていたと見るべき特段の事情がないとして、妻と息子の賠償責任を否定しています。

要するに、社会常識から見て、「あなた、やっぱり責任あるんじゃないの」という場合は、714条を類推適用するけど、それ以外は責任は負担させないということです。本件は、息子は東京だし、お母さんは、85歳で左右下肢に麻痺拘縮があり要介護1だから、世間常識的には、「責任を負わせるのは酷でしょう」という事案であることは、異論がないんじゃないんでしょうか。
なお、負担する場合も、過失相殺の規定が類推適用されます。高齢者の問題は、社会全体で負担すべき問題で、家族にだけ責任を負わせるのは酷な場合が多いからです。


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