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zoom RSS 裁判官で離婚原因有無の判断が異なるのは、何を重視するかの違い

<<   作成日時 : 2017/03/10 10:17   >>

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民法は、裁判で離婚できる離婚原因として、以下の5つを規定しています。
1号 不貞行為  
2号 悪意の遺棄   
3号 3年以上の生死不明   
4号 強度の精神病   
5号 そのほか婚姻を継続しがたい重大な事由
しかし、現在は、離婚原因は、第5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」のみで、1〜4号は、5号の例示にすぎないと解釈されています。(3号は別)
裁判所が、婚姻を継続しがたい重大な事実があり5号に該当すると判断すれば、相手方が離婚に応じなくても、裁判所が離婚させてくれます。(民法770条)
ただし、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があっても、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を認めるのが相当」な場合は、離婚を認めない場合もあります。

このように離婚原因は、まず「婚姻を継続しがたい重大な事由」を判断し、
次に仮に「婚姻を継続しがたい重大な事由」があっても、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を認めるのが相当」な場合か否かを判断し、最終的に離婚原因の有無を判断するわけです。

しかし、「婚姻を継続しがたい重大な事由」とか「婚姻の継続を認めるのが相当」な場合という判断は、非常に抽象的で、この言葉だけでは、どういう場合が離婚原因にあたるかの判断基準にはなりません。結局は、個々の担当裁判官の考えによるのですが、この考えは、以下の二つに分かれます。(○○説の名称は、便宜上、テキトーにつけたもの。他で使用しないでください。

別居期間重視説
別居期間に重点を置いて形式的に判断する。
この立場は、実質的な判断をしようとすると、判断者の個々の主観に左右される、裁判官は、そのような主観的な事情に踏み込むべきではないと考えます。
ただし、この立場でも、以下の実質的な要素もある程度考慮される裁判官とあまり重視されない裁判官がおられます。

実質的判断説 
別居期間よりも、諸々の諸事情を総合的に考慮して判断する。
この立場は、別居期間だけで判断すると、不合理な結論になると考えます。
ただし、この立場でも、離婚請求される配偶者の今後の生活を重視するという不利益重視説と、それよりも、全体的な信義則を重視するという信義則重視説の裁判官がおられます。前者は離婚請求側に経済的な不利益がなければ離婚を認めるべきだという立場で、欧米的な破綻主義に近い立場です。これに対し、後者は、日本的な破綻主義と言えるでしょう。

ケース1
例えば、夫が外資系の高額所得者、妻が専業主婦。二人の間に幼い子供が一人いる。婚姻期間は10年、別居期間は1年。
こういうケースで、夫が不倫をして妻に離婚を求めた。この場合は、どの立場でも離婚請求は棄却されると思います。
しかし、逆に妻が不倫をして夫に離婚を求めた場合、どの立場に立つかで結論が異なってきます。
まず別居期間重視説だと、最高裁は、不倫の場合は、「相当長期の別居」といっていることから、離婚は問題外と判断されます。
実質説でも、信義則を重視する立場―信義則重視説では、やはり、不倫をして離婚を求めるのは信義則に違反しますから、離婚請求は棄却されます。
これに対し、実質説に立ち、離婚請求される配偶者の今後の生活を重視する立場―不利益重視説だと、本件は、経済力のある配偶者が離婚を求められているのであり、離婚を認めても不利益はないことから、離婚が認容されます。

ケース2
もう一つケースをあげると、夫婦共働きで双方の収入は同じ、子供はいない、同居10年別居1年というケースはどうでしょう?
別居期間重視説に立つと離婚は認められないでしょう。しかし、実質説に立つと、信義則重視説でも、不利益重視説でも、どちらの立場に立っても離婚は認められるでしょう。離婚は認めても信義則に違反しないし、相手に不利益を与えないからです。

おそらく、このような考えは、ほとんど論じられた事がないと思いますし、担当裁判官自体が意識されていないと思われます。自分としては「裁判官の良心」に従って判断しているという認識しかないからです。
しかし、代理人の立場として、多数の案件に触れていると、裁判官の、思考の違いがはっきりと認識できます。離婚事件を扱っていると、家裁と高裁で判断が異なったり、担当裁判官が変更になったため判断が異なったというケースに、頻繁に遭遇するからです。他の事件ではみられない特徴です。これは、どちらかが判断を間違えたというより、離婚に対する考え方が違うからです。

個人的実感からすると、実質説かつ不利益重視説と実質説且つ信義則重視説が主流で、別居期間重視説は、非主流ですね。最近の傾向としては、信義則重視説から不利益重視説に流れが変わりつつあるという印象を受けます。


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