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zoom RSS 遺留分減殺と共有物分割

<<   作成日時 : 2017/11/13 16:57   >>

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「相続させる遺言」あるいは「遺贈」により相続人の一人が遺産を取得したところ、それが他の相続人の遺留分を侵害しているときは、遺留分減殺の意思表示をすることになる。
遺留分減殺の意思表示は、物権的効果を生じさせるので、対象物が不動産の場合は、その遺留分相当部分の不動産が遺留分権利者に帰属し、その後は、遺留分権利者と遺言・遺贈により不動産を取得した人の共有状態になる。
それでは、この共有状態を解消するのは、共有物分割か(訴訟説)?それとも、遺産分割か(審判説)?遺留分減殺後は通常共有になると解すれば訴訟説となり、遺産共有になると解すれば審判説になる。
(以下の説例は、いずれも、価格弁償の意志表示がなされなかったことを前提にしています。)

設例1
被相続人は父で、相続人は長男A、次男B。遺産は不動産のみ。父はAに、不動産を全てAに遺贈するという遺言を残した。
次男Bは、長男に対して、遺留分減殺の意思表示をした。
この場合、遺留分減殺後の共有状態を解消するのは、共有物分割か(訴訟説)、遺産分割(審判説)か。

通常共有状態になり、共有物分割である。
最高裁平成8年1月26日判決(判タ903号104頁)は、訴訟説に立ち、以下の様に述べています。
「遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解するのが相当である。」
「(民法の各規定は)遺留分減殺請求権行使の効果が減殺請求をした遺留分権利者と受贈者、受遺者等との関係で個別的に生ずるものとしていることがうかがえるから、特定遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解される。そして、遺言者の財産全部についての包括遺贈は、遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもので、その限りで特定遺贈とその性質を異にするものではないからである。」
この判決は、特定遺贈・全部包括遺贈についての判決で、これ以外は、当然に訴訟説に立つものではないというのは一般的な認識です。

設例2
被相続人は父で、相続人は長男A、次男B。遺産は不動産のみ。父はAに、全ての遺産の10分の9をAに、10分の1をBに遺贈するという遺言を残した。
次男Bは、長男に対して、遺留分減殺の意思表示をした。
この場合、遺留分減殺後の共有状態を解消するのは、共有物分割か(訴訟説)、遺産分割(審判説)か。

遺産共有状態になり、遺産分割である(審判説)。
遺言が包活的割合的遺贈であり、遺留分減殺の結果、遺産に対する割合を修正させるだけだから、遺産共有となる。

設例3
1、被相続人は父で、相続人は長男A、次男B。遺産は不動産のみ。父はAに、不動産を全てAに「相続させる」という遺言を残した。
次男Bは、長男に対して、遺留分減殺の意思表示をした。
この場合、遺留分減殺後の共有状態を解消するのは、共有物分割か(訴訟説)、遺産分割(審判説)か。
2、全ての遺産をAに「相続させる」という遺言を残した場合、同様か。

遺産共有状態になり、遺産分割である(審判説)。
1は遺言が特定の遺産を相続させるという分割の指定であり、その特定不動産については遺産分割は相続と同時に終了しているから、遺留分減殺をしても、通常共有になるだけである。
2も、「すべてを相続させる」という遺言であり、やはり、分割の指定であり、遺産分割は相続と同時に終了しているから、遺留分減殺をしても、通常共有になるだけである。

設例4
被相続人は父で、相続人は長男A、次男B。遺産は不動産のみ。父はAに、不動産の10分の9をAに、10分の1をBに「相続させる」という遺言を残した。
次男Bは、長男に対して、遺留分減殺の意思表示をした。
この場合、遺留分減殺後の共有状態を解消するのは、共有物分割か(訴訟説)、遺産分割(審判説)か。

原則 遺産共有状態になり、遺産分割である(審判説)。
不動産の10分の9をAに、10分の1をBに相続させるという遺言は、分割の指定ではなく、相続分の指定であると解される。相続分の指定である以上、遺留分により指定相続分が変更を受けると考えられるから、遺産共有状態が続き、その後の手続きは遺産分割による。
ただし、この「不動産の10分の9をAに、10分の1をBに相続させるという遺言」が、分割の指定であると解されるときは、通常共有となり、その後の手続きは共有物分割になる。

疑問点
「相続させる遺言」で、「相続分の指定を伴う分割の指定」のときは、遺留分減殺後は、遺産共有になる。
ところで、たとえば、設例3の「相続させる遺言」は、分割の指定であるが、相続分を超える分割の指定であり、このような場合は、背後にAの相続分を「10分の10とする相続分の指定」をともなっていると解されている。相続分の指定がないと、相続分を超える部分は代償金を支払う必要が出てくるが、これは、遺言者の意思に反するからである。
そうなると、これも、「相続分の指定を伴う分割の指定」になるが、なぜか、この場合だけ、通常共有と解されている。「相続分の指定を伴う分割の指定」のときは、遺留分減殺後は、遺産共有になるとする通説との整合性はどうなるか?


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