財産分与と夫婦別産制―2分の1ルールが崩れるとき

妻の地位向上、権利意識の高まりから、離婚に伴う財産分与については、2分の1ルールを適用して、夫婦平等でわけることが、当たり前のようになっている。
自分が弁護士になった頃は、専業主婦の財産分与は4分の1,せいぜい3分の1止まりで、2分の1などという発想はなかった。当時、女性地位向上運動に関わっている人たちが2分の1ルールを主張していたが、裁判所は、「非常識な極論」として、全く顧みなかった。
それが、今や2分の1ルールは「常識」になっている。

2分の1ルールの根拠は、専業主婦だろうと何だろうと、同居期間中に築いた財産は、夫婦が協力して築いたもので、実質は夫婦に平等に権利があると考えるのだ。

この考えを極限まで推し進めると、「同居期間中に築いた財産は、名義は、夫名義になっていても、実質は共有であり、財産分与は、共有物の精算にすぎない」ということになる。

この共有物精算的な考え方に立つと、従来の財産分与に関する考えは、根本から覆ることになる。

まず、財産分与は2年の除斥期間があるが、2年経過したら、財産分与の審判申立はできなくても、共有物の精算だとすると、共有物分割訴訟あるいは共有持ち分確認という形で夫婦間の財産の精算を求めることができる。

一番影響が大きいのが、住宅ローンを抱えた建物の財産分与である。従来の家裁実務では、
1,住宅ローンがある建物は、財産分与では名義変更は命じない。
2,ただ、家の現在価値が、別居時のローンを上回る場合のみ、その上回る部分を非名義人配偶者に金銭で分与する。
という処理をしてきた。
例えば、家の名義が夫で、別居時のローンが2000万円、家の時価が3000万円の時、〔3000万円-2000万円〕×2分の1で、夫は妻に500万円を渡して財産分与は終了することになる。仮に、その家に妻が住んでいて夫が住んでいなくても、名義人が夫である以上、妻は、500万円をもらって、その家から立ち退かなければならない。

上記の例で、別居時のローンも、家の時価も2000万円だとすると、分与すべき財産はないことになる。妻は、何ももらえない。仮に、その家に妻が住んでいて夫が住んでいなくても、妻は、1円ももらわずに、その家から立ち退かなければならない。
もし、妻が婚姻前の預金を頭金に充てていたとしても、例えば、上記の例で、500万円を頭金にあてていたとしても、妻は、1円ももらわずに、その家から立ち退かなければならない。

以上が、従来の家裁実務であり、家裁の「常識」である。
しかし、財産分与を共有物の精算と捉えると、この家裁実務は、根本から覆ることになる。ローンや時価に関係なく、不動産は2分の1ずつに共有登記されることになるからである。
仮に、家裁の審判で「財産分与の対象にならない」という判決がでたとしても、妻は、地裁で、夫に共有持ち分の確認等を求めることができるようになる。

 判例時報No2179号(5月11日号)で紹介された東京地裁平成24年12月27日付け判決は、まさに、「財産分与は共有物の精算」という考えを推し進めたものだ。裁判所は、離婚訴訟において、特定の財産が財産分与の対象から外され、夫婦の一方の特有財産から支出された金員について何ら審理判断がされなかったときは、例え離婚から2年経過していたとしても、離婚の際の財産分与とは別に、当該財産の共有関係について審理判断されるべきであると判断し、共有状態にあると認定した。

しかし、この考えは、民法の夫婦別産制、訴訟と非訟の違いを無視するもので、現行法の解釈としては、無理がある。現行法は、財産分与と夫婦別産制を次のように考えている。

1,我が民法は、夫婦別産制という考えにたっているから、婚姻期間中に稼いだもので、夫が稼いだ物は夫のもの、妻が稼いだものは妻のもの、と割り切って考えることになる。
   ↓
2,ただ、法律的には、そうだとしても、離婚にあたり、夫婦間の財産を精算するとき、夫婦別産制のみでは、妻に苛酷な結果になる。
   ↓
3,そこで、家裁の非訟手続きで、夫婦別々の財産関係を共有状態に強引に作り替え、精算しててしまおうというのが、財産分与制度である。

「非訟」は、法律関係を形成する手続き、「訴訟」は、事実認定に基づき法律を当てはめ法律関係の確認をする手続だから、財産分与を、家裁の非訟手続きとした現行法は、夫婦別産制と整合がとれている。
逆に、前記東京地裁の考えにたつと、地裁が訴訟手続きの中で非訟手続き的な処理ができるようになる。

そういう意味で、今後の立法論としてはともかく、東京地裁平成24年12月27日付け判決は、現行法の解釈としては、無理があり、これが控訴審で維持できなかったのは、当然である。
本件は、結局、控訴人側の全面勝訴(原判決の全面変更)で終ったが、現在の財産分与には、看取できない矛盾点があり、立法で解決すべき問題点は、多々あることは否定できない。

なお必ず2分の1ルールが適用されるかというと、必ずしも、そうではない。わが事務所では、普通のサラリーマン家庭で、夫側6vs妻側4という判決を勝ち取った。妻側の言動が、あまりにも身勝手で、裁判官をあきれさせたのだろうが、妻側は控訴した。控訴審で、この判決が維持できるように頑張りたい。


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